UNICEF調査「子どものインターネット利用:デジタル世界のリスクと機会~子どもたちを守るおとなの役割」

ユニセフ(国連児童基金)は、ベルリン(ドイツ)で29日まで開催中のインターネットガバナンスフォーラム(Internet Governance Forum:IGF)において発表した新しい報告書『つながる世界で成長する私たち』(原題:Growing up in a connected world)の中で、子どものインターネット利用の行き過ぎた制限は、子どもたちが学習とスキルを身に着ける機会を奪うと述べた。

携帯電話でゲームを楽しむセルビアの姉弟。(2019年10月撮影)


※本記事はユニセフ本部が発信した情報をもとに、日本ユニセフ協会が編集・翻訳・発表したものをベースにSTEAM THE MEDIA編集部内で再構成した。原文はこちら。



11カ国の子ども1万5,000人のデータを比較

ユニセフ・イノチェンティ研究所とLSE ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(ロンドン大学)が、Global Kids Onlineの調査に基づいてまとめた報告書『つながる世界で成長する私たち』(原題:Growing up in a connected world)は、アルバニア、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、チリ、ガーナ、イタリア、モンテネグロ、フィリピン、南アフリカ、ウルグアイの計11カ国における1万5000人近くの子どものインターネット利用に関するデータを比較。

子どもたちがインターネット上で行うことは、たとえ娯楽と見なされるものであっても、デジタルスキルの構築に非常に重要であることを指摘しています。


リスクをシャットアウトするのではなくルールを教えることが重要


インターネットの使用における子どもへのリスクとして、報告書は次のような事例を紹介している。


・南アフリカで調査対象となった子どもや若者の半数以上が、ネット上で性的コンテンツに晒されたと述べた。
・イタリアとウルグアイでの調査対象者22%が、自傷行為の内容に晒されたと述べた。
・イタリアとウルグアイで調査対象となった子どもの35%が、ヘイトスピーチに晒されたと述べた。

・ブルガリアの10〜14歳のFacebookユーザーのうち、5人に2人がアカウントを公開している。

・調査対象となった11カ国で、30%から75%の子どもが、ネットで得られる情報の真偽を見分けられないと答えている。


「私たちは、子どものインターネット利用のリスクについてはよく耳にしますが、インターネットが提供するレジリエンス(回復力)や、子どもたちのデジタルスキルの構築についてはあまり語りません」と、ユニセフ・イノチェンティ研究所所長代行のプリシラ・イデレ(Priscilla Idele)は述べている。

「道路の渡り方を教えるのと同じように、子どもたちにはインターネットの使い方を教えるべきです。リスクがあるからといって、子どもたちが道路を渡るのをやめさせることはできません。私たちの役割は、あらゆる状況で、安全で責任を持った道路の渡り方を子どもたちに教えることと、子どもたちを守るための安全策を講じることです」

また、ユニセフ・イノチェンティ研究所の子どもとデジタル技術の研究主任で、報告書の共著者であるダニエル・カルデフェルト・ウィンター(Daniel Kardefelt-Winther)も「子どもたちは、ある程度のリスクがあることを前提に、デジタル環境を活用する方法を学ぶ必要があります。これは、オフラインの世界でどう歩んでいくかを学ぶのと同じです」と述べる。

「保護者が必要以上にインターネット利用を制限すると、子どもたちの将来のための準備が疎かになってしまうかもしれません。最も重要なことは、子どもたちがサポートを必要としている時に、おとなはそれに応える準備ができているということです」


保護者とのコミュニケーションが最重要

子どもたちがデジタル世界のリスクに晒されるのを最小限に抑え、その利益を最大限に活かすには、問題のあるオンラインコンテンツやそれへのアクセスに対処することが重要だ。ユニセフは、ハイテク企業に対して、幼い子どもにとって有害なコンテンツを積極的に監視および削除し、保護者や教育者が、子どもたちがインターネット上での機会を最大限に活用できるようサポートすることを求めている。

中でも、保護者が子どもたちにインターネット上で何をするかについて話したり、一緒に活動したりすることが重要な役割を果たすと報告書は指摘している。

保護者からのサポートがあって、子どもたちはインターネット上でより幅広い活動に参加し、スキルを伸ばし、リスクに晒されることも減らすことができる。

「Global Kids Onlineの調査では、子どもがインターネット上で過ごす時間を心配するよりも、親が子どものデジタル世界に積極的に関わり、遭遇する可能性のある特定のコンテンツと接触のリスクについて話し合うことで、子どもが自己回復力を得て成長できると示唆しています」 と、LSEの社会心理学教授であり、報告書の共著者であるソニア・リビングストン(Sonia Livingstone)氏は述べている。


子どもたちは自宅で家族所有のPCでインターネットにアクセスするだけではなく、自分のモバイル端末を用いて世界とつながることが常になりつつある。

子どもの安全を守りながらインターネットがもたらす利益を最大化するには、子どものインターネットとの付き合い方についてバランスの取れた取り組みが必要だと改めて感じさせた。


ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)

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